リハビリテーション科脳卒中の危険因子

脳卒中の危険因子

高血圧症

脳卒中発症例の約70%は血圧の管理で予防できたのではないかとする報告もあり、高血圧は脳出血、脳梗塞を問わず脳卒中の最大の危険因子である。収縮期血圧、拡張期血圧を問わず、血圧が上昇すれば、正相関して脳梗塞発症率は増加する。高血圧は脳動脈硬化との関連が高く、正常血圧例と比較すると動脈硬化の進行は15ー20年早いとされている。主幹動脈では高血圧による血管内皮障害から動脈硬化(アテローム性硬化)を引き起こし、最終的には血栓で血管を閉塞するに至る。一方穿通枝の細動脈ではリポヒアリノーシス(脂肪硝子変性)による血管内腔の狭窄、閉塞を引き起こし、ラクナ梗塞を生じる。 長年の高血圧のあるものではその是正を行うためとはいえ急激な血圧の降下は好ましくないと想像されている。これは高度な主幹動脈狭窄病変があると脳血流の自動調節能が正常とは異なっており、降圧で大きく脳の血流が低下し血行力学的な脳虚血を引き起こす可能性があるためである。しばしば降圧目的にペルジピンの投与やフランドールテープの貼付が行われるが、急激な降下が起こることもあり、慎重な使用が必要である。 理想的には血圧は数カ月かけて収縮期血圧130mmHg、拡張期血圧80mmHg以下に下げるようにコントロールする方が良い。

糖尿病

脳卒中発症例の約70%は血圧の管理で予防できたのではないかとする報告もあり、高血圧は脳出血、脳梗塞を問わず脳卒中の最大の危険因子である。収縮期血圧、拡張期血圧を問わず、血圧が上昇すれば、正相関して脳梗塞発症率は増加する。高血圧は脳動脈硬化との関連が高く、正常血圧例と比較すると動脈硬化の進行は15ー20年早いとされている。主幹動脈では高血圧による血管内皮障害から動脈硬化(アテローム性硬化)を引き起こし、最終的には血栓で血管を閉塞するに至る。一方穿通枝の細動脈ではリポヒアリノーシス(脂肪硝子変性)による血管内腔の狭窄、閉塞を引き起こし、ラクナ梗塞を生じる。 長年の高血圧のあるものではその是正を行うためとはいえ急激な血圧の降下は好ましくないと想像されている。これは高度な主幹動脈狭窄病変があると脳血流の自動調節能が正常とは異なっており、降圧で大きく脳の血流が低下し血行力学的な脳虚血を引き起こす可能性があるためである。しばしば降圧目的にペルジピンの投与やフランドールテープの貼付が行われるが、急激な降下が起こることもあり、慎重な使用が必要である。 理想的には血圧は数カ月かけて収縮期血圧130mmHg、拡張期血圧80mmHg以下に下げるようにコントロールする方が良い。

高脂血症

総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の高値、HDLコレステロールの低値は皮質枝系脳梗塞の危険因子と考えられている。日本でも食生活の欧米化が進むにつれこのような病態が問題となってきている。高脂血症の場合には脳の血管のみならず心臓の冠動脈の動脈硬化(心筋梗塞)についても注意を払う必要がある。

心房細動

心房細動は高齢者では脳塞栓の原因として大きな要因となる。多くは弁膜症のない非弁膜性心房細動であり、60歳以上になると2ー4%に見られ、加齢に伴い増加する。心房細動がある場合には心房内の血流のうっ滞、乱流などから心房内血栓を形成し、遊離した血栓が脳の血管を詰め、脳塞栓を引き起こす。予防にはワーファリンの投与が必要であり、危険度の高い人(高齢、脳梗塞の既往のある人など)では投与が必須である。

心疾患

先の心房細動だけでなく、僧帽弁狭窄、最近の大きな心筋梗塞、感染性心内膜炎、心臓弁置換術後の状態は、確立された危険因子であり、このほか心筋症、僧帽弁逸脱、僧帽弁輪石灰化、卵円孔開存なども危険因子と考えられている。

メモ 僧帽弁逸脱

僧帽弁および弁下組織の粘液変性および左室の大きさと僧帽弁の解剖学的不均衡により出現する。心エコーで前尖あるいは後尖が逸脱することを観察し、診断する。カテコーラミン代謝異常により、血小板血栓が形成されることから、抗血小板薬が第一選択となる。

メモ 卵円孔開存

近年原因が明らかでない脳梗塞患者で高率に卵円孔開存が多いことから注目されている。卵円孔開存は一般成人でも約1/4に直径2ー19mmで存在するとされる。この卵円孔を介して脳に塞栓を生じる病態を奇異性脳塞栓症と呼ぶ。左心系に塞栓源が存在せず、塞栓源となる静脈血栓の存在、もしくは肺梗塞の合併などがあれば疑うべきである。静脈血栓がある場合は抗凝固薬を用いる。抗凝固薬でも再発する場合は外科的手術が必要となる場合もある。

喫煙

喫煙者の脳卒中発症のリスクは非喫煙者の1.5ー2.9倍あり、またこれに高血圧が加わると10-20倍になるという。喫煙は血小板凝集能の亢進、血液凝固因子(フィブリンなど)の増加、ヘマトクリットの上昇、HDLコレステロールの低下などをきたし、脳梗塞、脳出血ともに発症率を上げる。禁煙後は約数年で非喫煙者と同様の状態に戻るとされている。

一過性脳虚血発作

厳密には異なるが心筋梗塞に至る前の狭心症の様なものであり、脳梗塞発症の警告発作と考えるべきである。TIA発症後脳梗塞に移行してゆく頻度は最初の1年が約12%であり、その後は一年に約7%とかなりの高率である。原因としては主幹動脈狭窄部に付着した血栓が剥離して遊走し、その遠位の血管を詰めてしまう(微小血栓による動脈ー動脈塞栓)ことが多いとされ、予防としては抗血小板薬の投与、内頚動脈の狭窄が著明であれば頚動脈内膜剥離術の適応などを検討する。

主幹動脈狭窄病変

頚部、眼窩部に血管雑音が聴取されれば、主幹動脈の狭窄程度につき評価する必要がある。頚部血管エコー、MR angiography、ヘリカルCT、血管造影などが必要となる。頚部の動脈の動脈硬化と心臓の冠動脈の動脈硬化は関連があるとされ、動脈硬化が強い場合には脳だけでなく心臓の方にも注意を払う必要がある。予防的措置としては先の一過性脳虚血発作に準じる。

飲酒

少量の飲酒では(日本酒1合/日程度)は脳梗塞の発症に関わらないか予防的に働く可能性がある。しかし多量の飲酒は危険度を高めるとされ、勧められるものではない。

上記以外の危険因子

上記の危険因子のほか、高ヘマトクリット値、抗リン脂質抗体、凝固線溶系の異常、ホモシステイン血症、無症候性脳梗塞なども危険因子として考慮すべきです。

メモ 抗リン脂質抗体症候群

抗カルジオリピン抗体や、lupus anticoagulant、β-グリコプロテイン Iという抗リン脂質が関与し、凝固系が促進し、血栓を形成する病態である。抗リン脂質陽性患者では高率に血栓症(静脈血栓症、脳梗塞)、習慣性流産を示し、APTTの延長、血小板減少、抗核抗体陽性などの検査異常を認める。血栓症予防には抗凝固療法が勧められている。

メモ ホモシステイン血症

ホモシステインは食物中のメチオニンがシステインに代謝される際の中間産物である。先天的なホモシステイン代謝酵素の異常または欠損で血中ホモシステインの増加を示すホモシスチン尿症では動脈血栓、静脈血栓が多発することが知られている。最近の報告では一般人でもホモシステインが血中で高値をとるものに脳梗塞が多いことが報告され注目されている。血管内皮細胞障害、血小板活性化など様々な要因が関与するとされる。

Top