食道の病気について
食道の病気としては主なものとしては腫瘍性疾患(できもの)、機能性疾患(胃液の逆流や狭窄による病気)があります。
腫瘍性の病気
- 平滑筋腫(良性のもの)
- 食道がん(悪性のもの)
機能性の病気
- 胃食道逆流症(GERD)(胃液が食道にもどってきて胸やけを引き起こす)
- アカラシア(食道の出口からうまく食べ物が流れていかない)
といったものがあります。食道に病気がある時は胸やけ、食道がしみる感じ、つかえ感、咳が生じることが多く、悪性の場合は声がかれたり、体重が急に減ったりします。こういった症状がある時は専門医の受診が必要です。
食道がん
わが国では、年間約10000人の方が食道がんにかかります。60歳以上の方に多く、たばこ、お酒、熱い食べ物、飲み物を好まれる方は要注意です。男女比は5:1と男性に多い病気です。食道がんは予後が悪いといわれていますが早期発見すれば完治できる病気です。多くの方が扁平上皮癌(95%)ですが、最近ではバレット食道がん(腺癌)も増えてきています。食道がんの症状には、食道がしみる感じ、食物のつかえ感、胸痛、咳嗽、声のかすれなどがあります。
食道がんの診断
- 食道透視(バリウム検査)
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
- 超音波内視鏡検査(EUS)(胃カメラから超音波検査を行い、がんの深さを見ます)
- 腹部、頚部超音波検査(腹部、頚部のリンパ節転移を評価します)
- 頚胸腹部CT検査(がんの深さを評価し、リンパ節転移、肝、肺などへの転移がないかを調べます)
術前に上記の精密検査を行って治療方針を決定します。
食道がんの治療
1. 内視鏡的治療≪内視鏡的粘膜切除(EMR)および粘膜下層剥離術(ESD)≫
- 絶対的適応:深達度がM1(図4参照)あるいはM2で周在性2/3以下と診断された症例(がんが粘膜の浅いところでとどまっているときは内視鏡でとりきれます)
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相対的適応:M3およびSM1であっても、患者さまが外科治療を望まない症例や全身状態が手術などに適さないと判断され、かつリンパ節転移がないと判断された症例(がんが粘膜の深いところもしくは粘膜下層の浅いところまで入っているときは患者さまとご相談のうえ内視鏡治療を行うこともあります)
- 粘膜内のがんを内視鏡で確認しながらがんとその周囲の正常食道粘膜にループ状のワイヤー(スネア)をひっかけて電気で焼き切る治療法です。翌日から経口盟取が可能で、入院期間はおよそ1週問で済みます。食 道がほとんど元の状態で残るため、退院後も食事量が減少することがなく治療前と比べてQOL(生活の質)が低下することはありません。手術に比ぺると侵襲が小さな治療法ですが、主な合併症としで出血、穿孔(食道壁に穴があく)、狭窄があり、発生釦度はそれぞれ約2%です。
2. 手術
適応
- 内視鏡治療適応でない病期 I (図5参照)の症例(粘膜下層にまで浸潤したがんや粘膜までのがんでもリンパ節転移があるもの)
- 病期 II、III(中程度に進行したもの)
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病期 III でT4症例は術前治療として化学療法併用放射線療法を行ない、その治療効果で手術適応があるか判断します。(リンパ節転移がなくてもがんが周囲に及んでいる場合はまず化学療法併用放射線療法を行い、取りきれる状態になったら手術を行います)
- 切除範囲(右開胸で行なうのが一般的}、リンパ節郭清範囲(三領域:頸部・胸部・腹部;二領域:胸部・腹部)、再建方法(再建経路:胸骨前、胸骨後、後縦隔、右胸腔内など;再建臓器:胃、結腸、小腸など)と種々の組み合わせがあります。
- 当院では食道がん手術後は概ね2ないし3週間で退院が可能となります。
3. 化学放射線療法
放射線照射と抗がん剤投与を同時に行う治療法です。体に負担がかからない治療法ではありませんが、食道や胃の機能が残り、傷が無いなど利点があります。
4. 化学療法
術前にがんを縮小させる目的で行ったり、血行性転移(肺、肝臓などの転移)がある時や、再発例に対して行われます。
5. 放射線療法
根治的治療として行う場合と、痛みや狭窄に伴う症状を緩和する目的で行う場合があります。
術後の治療について
- 進行食道がんはほかの治療(化学療法、放射線治療)を組み合わせていく必要があります。摘出したがんの状態を詳しく調ぺて必要に応じで術後補助化学療法(抗がん剤治療)を行っていきます。またフオローアッアが必要なために定期的な外来通院を行っていただいております。
食道アカラシア
食道下部壁内の神経叢細胞の変性・消失により食道下部の筋肉が弛まなくなってしまう病気です。食道の蠕動運動(動き)も障害され、口側食道の異常拡張が生じます。20代~40代の女性に多い良性の病気です。 食物のつかえ感、胸痛、嘔吐などの症状が多く認められます。比較的珍しい病気のため見逃されている場合もあります。薬物治療や拡張術(内視鏡で拡げます)といった内科的な治療を優先しますが、手術の必要な場合があります。食道透視(バリウム検査)および上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)にて重症度を評価し適切な治療を選択しております。
バリウム服用後、食道からの流れが悪く、食道が著明に拡がっています。
胃と食道の境界が非常に開きにくい状態です。
胃食堂逆流症(GERD)
胃液が食道 に逆流することにより発症する病気で、胸焼け、胸痛、嚥下困難などの症状が多く認められます。そのほかには耳鼻咽喉症状として声のかすれ、耳痛、呼吸器症状として咳、のどの痛み、ひどい場合は肺炎も生じます。喘息と似た症状のこともしばしばあります。最近ではGERDの方が増加していますが、ヘリコバクターピロリ感染者が減少していることが関係していると言われています。GERD発症には肥満や過食および食道裂孔ヘルニアの存在が関係しています。生活指導、薬物治療といった内科的な治療を優先しますが、食道裂孔ヘルニアが高度な場合(図8、9参照)などには手術が必要な場合があります。当科ではそれぞれの患者様に一番適した治療法を選択しております。
胃が上方に大きく脱出しており高度の食道裂肛ヘルニアです。
≪参考文献≫ 1.日本食道学会編: 食道癌取扱い規約. 第10版補訂版. 金原出版, 東京, 2008
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上記の疾患に関する診断、治療を行っております。なお当科では東京医科歯科大学食道胃外科と連携し治療を行っております。なにか気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。
外来日:毎週水曜日 PM 0:30~3:30