診療科のご案内 股関節センター

股関節疾患について

成人の股関節痛をきたす疾患で多いものとして、以下の5つのものが挙げられます。

1.変形性股関節症

2.(特発性)大腿骨頭壊死症

3.腰椎椎間板ヘルニア

4.弾撥股(snapping hip)

5.悪性腫瘍骨転移

変形性股関節症

成人の股関節痛の中で最も多く見られる疾患として変形性股関節症が挙げられます。
変形性股関節症は、その病期においておおよそ4期に分けられます。

a) 前股関節症
b) 初期股関節症
c) 進行期股関節症
d) 末期股関節症

a) 前股関節症

股関節臼蓋形成不全ともいい、レントゲン上、明らかな軟骨の厚みの減少は見られないが、長時間の立ち仕事や運動後に股関節の不安定性や大腿筋膜張筋などの疲労により、足の付け根の外側に重だるい痛みが生じたり、進行すれば足の付け根あるいは臀部中央(股関節部)に時に鋭い痛みが出現します。これらは一般的に短時間の安静にて回復することが多いようです。

臼蓋形成不全が顕著である場合には、臼蓋形成術(寛骨臼回転骨切り術、キアリ骨盤骨切り術)など(いわゆる関節温存手術)が良い適応となるため、当科においては、主に自己血のみを用いた寛骨臼回転骨切り術を採用しています。

年齢的には、50歳代前半までであれば、骨切り術の適応としています。また、十分に良い手術がなされていれば、20数年以上に及ぶ安定した効果が期待できるとされています。

単純レントゲン像にて一見正常であっても、立位でレントゲンを撮ることによって、隠れている臼蓋形成不全を見いだせることもありますので、注意深い診察が必要です。

b) 初期股関節症

関節軟骨がわずかに摩耗して、軟骨の厚みが減少し始めた時期のことです。放置すれば時間がたつにつれて進行し、短時間のうちに末期股関節症へと進行してしまう症例も見られます。筋力強化などは、股関節痛を軽減させる可能性もあり、この時期の患者さんには、筋力強化なども行っていただいております。

しかしながら、しっかりと除痛をはかる治療としては、主に手術療法がとられます。手術としては、多くの場合、大腿骨骨切り術、キアリ骨盤骨切り術(適応により寛骨臼回転骨切り術)など(いわゆる関節温存手術)が行われ、当科においてもこれを原則として治療しています。

c) 進行期股関節症

関節軟骨が一部または広範に消失している状態の股関節を意味します。

歩行時に股関節(足の付け根)に時として鋭い痛みをおぼえるほか、多くは普段から鈍く重だるい痛みが感じられます。

レントゲン画像上関節軟骨の一部しか消失していないように見えても、実際に手術を行っていると(術中所見)、股関節の軟骨はほぼ消失しているか、一部に変性した軟骨がわずかに残存していることがほとんどであり、関節温存手術の適応とならないか、もしくは関節温存手術を行っても術後2~5年という短期間に股関節痛が再発する症例がかなり多いため、関節温存手術を行う場合には、適応は慎重に決定されなければならないと考えられます。

当科では、これまでの経験をもとに変形股関節の形態分類と骨密度などから総合的に判断し、関節温存の可能性につき検討を加えた上で治療方針の決定をしております。しかしながら、治療法としては、人工股関節の適応となる症例が多いのも事実です。

ただし年齢が30歳代以下など、患者によっては、タイムセービングな方法として、関節温存術(大腿骨骨切り術、キアリ骨盤骨切り術など)を行う場合もありますので、患者さんごとに適応が決まります。

d) 末期股関節症

股関節の関節軟骨がほとんどすべて消失した状態を意味します。歩行時に足の付け根の部分(股関節)に疼痛をおぼえることはもちろん、安静時にも同部に痛みをおぼえることもあります。

治療法としては、若年者には、長期的な観点から関節温存手術が行われることもありますが、青壮年期以上の症例には、人工関節が第一選択となります。

当科においては、人工股関節の術後入院期間は、平均18日であり、全例自宅へ退院しています。

術後は、翌日あるいは翌々日に離床し、離床日より歩行訓練を開始します。これにより、肺梗塞、褥創、筋力低下、平衡感覚の低下など長期臥床によると思われる合併症を未然に防ぐことが可能であり、また筋力の回復も良好なことが示されています。

両側罹患例に対しては、両側同時股関節置換術を行っており、この場合にも入院期間は、平均24日程度です。

大腿骨頭壊死症

ステロイド剤を大量に内服した場合に生じやすい疾患です。したがって、ステロイド剤を大量に投与しなければならないような疾患、すなわち膠原病、喘息、血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、慢性関節リウマチなどの治療の副作用として出現することがあります。また、プレドニン換算量が17mg/日以上となると、この疾患の発症率が上がるとの報告もあります。

ステロイド剤を内服したからといってすべての人に発症することはありませんが、ステロイド剤を投与された場合には、注意深い観察が必要です。

また、骨頭壊死はアルコール多飲とも関係があるとされています。毎日ビール大瓶1本以上あるいは日本酒一合以上必ず飲まれる方で、原因不明の股関節痛が出現し、安静にても軽快しない場合や、膝周囲に放散する痛みがある場合などにも、まず疑うべき疾患の一つとなります。

早期よりの診断には、MRIが有用です。これにより病巣の範囲を特定することができ、治療法に役立ちます。

治療法としては、病気の範囲などにより異なりますが、非常に病巣が小さく体重がかかるところでなければ、経過観察のみを行っております。また、ある程度の大きさの病巣があり、日常生活に支障をきたす場合には、手術の適応となります。この場合、関節温存が可能であれば、大腿骨頭回転骨切り術や大腿骨外反骨切り術、内反骨切り術など病気の状態に応じて治療法を選択します。

しかしながら、病巣が大きく関節温存の可能性が少ない場合には、関節固定術や人工関節置換術などになる場合もあります。臼蓋の軟骨が全く傷んでいないような時期であれば、人工骨頭置換術の適応もありますが、一般には、手術中に臼蓋を観察すると臼蓋軟骨も多少傷んでいることが多く、このため当科では人工股関節置換術となることがほとんどです。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアの患者さんの中には、股関節のあたりに痛みを感じる人がいます。また、その反対で、臀部に痛みを感じたために腰痛症の診断で腰椎牽引や内服治療を行ってもなかなか改善の見られない方もおられます。

いずれにしても、股関節に問題があるのか、それとも腰椎に問題があるのかは、専門医による診断が必要な場合があります。腰椎椎間板ヘルニアの場合には、必要があれば腰椎MRIなどの追加検査により判明し、腰椎の治療を行うことで改善します。

弾撥股(snapping hip)

股関節が、時々はずれそうな感覚をおぼえたり、ある動作をすると、強い痛みとともに"ぼこっ"あるいは"がくっ"という音や感じを自覚する疾患です。

これは、多くは大転子(大腿骨の出っ張りの部分)あたりで筋膜が骨を乗り越えるときや、こすれて大きくなった滑液包という袋が筋膜や腱のすべりを邪魔するために生じる痛みや音ですが、時には足の付け根の筋肉(腸腰筋)が恥骨近辺でこすれておきることもあります。この診断にはかなり熟練を要しますが、弾撥股のみで、将来人工関節が必要となるような人はいません。

治療としては、まずは、保存的に内服と湿布などで様子を見ますが、だめなら麻酔剤の局所投与と筋肉のストレッチを行います。これでもだめなら手術により、こすれる部分を削ったり、こすれる部分の腱の延長をします。

悪性腫瘍骨転移

もともと、以前に内臓のがんなどで治療している場合、血行の良い股関節に腫瘍が転移し、そのために股関節が痛くなる方がおられます。また、以前に悪性腫瘍などの指摘を受けていなくても、骨に腫瘍が転移して発見されることもあります。従って、注意深いレントゲン像の読影と場合によりMRIなどの検査が必要になることがあります。

この場合の治療としては、まず、原発巣(もとの腫瘍がどこに由来するのか)の検索とともに、全身の検査が必要になります。したがって、この場合は内科あるいは以前かかった(腫瘍の手術をした)科にかかっていただき、治療方針を決定することになります。

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