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当院で行っている人工股関節の手術手技をご紹介します。これは特殊例を除いた、通常の方法です。
1.下肢(足)の長さの確認と術中矯正
診察の時点で、手術しない側の下肢と手術する側の下肢の長さを計測し、あらかじめ、どの程度の足の長さが本人にとって最も良いかを補高(靴の中に厚みのある中敷きを入れるなどして)にて決定します。さらに、術前の股関節や脊椎機能撮影によるレントゲン写真、CT画像との比較を行い、最終的な術後の足の長さを決定します。これらの数値をもとに、術中は、計測装置を用い下肢の長さを決めることでご本人に最も適した長さを得るように心がけています。
2.手術の体位
手術は、側臥位という横向きに寝た姿勢で手術台に体を固定して行います。
3.皮切
太ももの一番外に張り出した大転子と言うところに、約8~10cmのほぼ直線の皮膚切開を加えます。
4.股関節の展開(現在当科にて標準的(ほぼ全例)に行っている術式です)
筋膜を切開し、大腿筋膜張筋と中臀筋の間から深層へ向かい、関節包に達します。関節包を切開して、股関節を前方に脱臼させます。この操作は、筋肉を一切切ることなく行えます。次に、頚部より変形した骨頭を切除します。
5.カップの設置
先ず、骨盤の方に手を加えます。関節包は症例により必要なだけ切除し、骨頭がはまっていた臼蓋が十分確認できるようにします。ここに人工の臼蓋(カップ、ソケットと言います)を設置するべく、骨を削ります。
あらかじめCT撮影にて計測した大腿骨の前捻角にあわせて決めた設置角度、固定性を確認しながらカップを固定します。
当科では、基本的には、初回手術でも二回目以降の手術においても骨セメントは使用していませんが、一旦カップが骨に固定されると容易には取れなくなります。
6.ステム(人工骨頭)の設置
次いで、大腿骨の方に手を加えます。骨頭を切除された状態では、大腿骨の髄腔(竹筒の中のようなところ-大腿骨内)が見えます。大腿骨の中に人工骨頭を固定する部分(ステムと呼んでいます)を形成するために、専用の器具にて骨の中にある海綿骨を削り、押し固めていきます。挿入方向を確認しながら、仮のステムを挿入し、仮の人工骨頭をつけます。ここで、大腿骨側にとって重要な要素であるステムの前捻を計測し、臼蓋ライナーなどの設置角度決定のための最終資料とします。
7.設置後の調整
全ての仮のインプラントが挿入されたら、試験整復(人工股関節を脱臼していない元の状態に戻すこと)を行い、下肢の長さがこれで良いのかを先ず確認します。さらに、股関節の動き(可動域)を調べ、大腿骨と骨盤の部分や、人工物(インプラント)同士がぶつからないか色々な角度の状態で丹念に調べ、もしぶつかりが見つかれば余計な骨を削ったり、インプラントの設置位置を変更したりすることによって、このぶつかり(インピンジ)が生じなくなるまで、調整します。
8.人工関節の最終設置
上記7.において問題がないことが確認されたならば、本物のインプラントを挿入設置します。この際、再度大腿骨側に対し、術前に予定した下肢の長さが得られるかどうかを、測定器を用いて足の長さを確認し、股関節の動きを確認します。足の曲がり(屈曲)や伸び(伸展)が悪いなどがあれば、再度残った関節包や筋膜を骨より剥離したり、腱を切離・延長することで改善します。
さらに、どの様な動作においても全く脱臼しないことを確認し、本物のステムを打ち込み、人工骨頭を装着します。カップ同様一度ステムを打ち込むと簡単に抜くことはできません。
9.洗浄、縫合
生理食塩水で十分に洗浄後、切離した筋膜をもとに戻して縫合します。股関節内に血液が貯まらないようにドレーンを入れておきます。手術中、筋肉を切ることがないので、筋肉を再縫合するようなことはありません。
■麻酔について
手術を行うためには麻酔が必要です。色々な薬を使用するため薬のアレルギーが生じることが稀にあります。また、術中に何か問題が起こっても患者さんは寝ていますから症状を訴えることが当然できません。術中全身管理が必要となりますが、当科では専門の麻酔科医が行っております。術前回診がありますので、分からないことはお聞きになってください。
■人工股関節の麻酔
当科で行っている麻酔は、基本的には口から管を肺の部分に入れて行う全身麻酔を行っております。脊椎麻酔(脊髄神経のそばに針を刺し、そこに麻酔薬を注入します。これは、一般外科や整形外科の手術で通常行われている麻酔です。)や硬膜外麻酔(脊椎麻酔と同様に背中に局所麻酔をして脊髄神経の近くまで針を刺し、ここに硬膜外麻酔用の細いチューブを挿入し、麻酔液を注入します。)と比較し、麻酔からの覚醒が早く、すぐにリハビリが行なえる利点があります。
麻酔に関する図示はこちらを参照下さい。masui.pdf(約296KB)

