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人工関節を使用しない手術法について説明します。
1.手術の体位
手術は、側臥位という横向きに寝た姿勢で手術台に体を固定して行います。
2.皮切
太ももの一番外に張り出した大転子と言うところに、約16~20cmのほぼ直線の皮膚切開を加えます。
3.股関節の展開
股関節の近傍に到達する方法として、骨盤から筋肉(中殿筋)を剥がして到達する方法と大腿骨の一部(大転子)を一時的に切り離して到達する方法があります。どちらの方法についても、それぞれ利点と欠点がありますが、当科におきましては、筋肉を骨から大量に剥がすとその後のリハビリや筋力に影響がでると考え、大腿骨の一部を一時的に切離する方法を採用しております。
この後、股関節の後方、前方、前下方の展開を行います。
後方-後下方の展開
皮下の一番浅いところにある大腿筋膜という膜を切開して股関節の外側に達します。ここで、股関節の後側についている短外旋筋群を骨から剥離し、後方の関節包と坐骨を見えるようにします。
前方の展開
次に、大転子の前方から関節包と大転子の前・後を確認し、大転子を中殿筋をつけたまま大腿骨から切り離します。これにより、股関節の前から後までが関節包を通してすべて見えるようになります。
前下方の展開
前方の関節包に沿って展開を広げ、恥骨の一部分を露出します。(上記のみでは骨盤の骨を切ってもまだ臼蓋は回転できません。前述の操作部分の骨切りも行うことによって初めて臼蓋が回転できるようになります。)
恥骨の骨切り
臼蓋の回転骨切りをするためには、まず腸骨・恥骨・坐骨すべての骨切りをしなければなりません。当科では、はじめに恥骨の骨切りから行っています。前下方の展開で露出した恥骨(腸恥隆起)を弯曲ノミを用いて骨切りを行います。
腸骨-坐骨の骨切り
次いで、透視下に臼蓋荷重部(体重のかかる部分)から関節包を取り囲み、骨頭を包み込むように弯曲ノミを用いて腸骨-坐骨の骨切りを行います。臼蓋荷重部では、水平面に対し約10゜傾けて骨切りを行うことによって骨移植をしなくとも固定ができ、股関節が元の位置(原臼位)におさまるようになります(この骨切り角度は各症例により異なります)。
4.寛骨臼の回転・固定
骨切りが終了したら、寛骨臼の回転操作に入ります。通常十分に骨切りができていれば、骨切りした股関節はすべるように回転できます。透視下ならびに実際に目で確かめながら、術前に計画したとおりに、荷重面の水平化と骨頭の前の部分の臼蓋によるかぶりが十分であることを確認し、吸収性のネジ2本を用いて骨切りした骨と骨盤とを固定します。ここで、再度股関節を動かし、回転した臼蓋の安定性が十分良いことを確かめて、固定を終了します。このとき特別な場合を除き、骨移植などは行いません。
5.大転子再逢着・閉創
創部を十分に生理食塩水にて洗浄した後、切離した大転子をステンレス製のネジで大腿骨に再接合し、股関節後方の筋肉ももとのところに再縫着します。
6.洗浄、縫合
大腿筋膜下にドレーン(傷の中に貯まった血を体外へ排出することによって、貯まった血が細菌感染源となることを防ぐために留置する細い管)を留置し、傷を各創ごとに閉じて手術を終了します。
■合併症
感染
寛骨臼回転骨切り術(RAO)でも細菌感染は、大変な問題です。感染が骨に及ぶと骨髄炎を起こしたり、関節内に及べば化膿性関節炎になります。対策として当科では無菌室という細菌のいない手術室で手術を行っています。
また、人工股関節手術後の感染と同様に、なりやすい人となりにくい人がいます。糖尿病、慢性関節リウマチなどの病気や、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)を内服している場合などです。しかしながら、人工関節をうける年齢に比し、年齢が若いことと人工物をほとんど入れないことから、感染の危険性は人工関節に比べてさらに低いと考えられます。
肺梗塞・肺塞栓(エコノミークラス症候群)
基本的には、人工関節の場合と同様です。
回転臼蓋の骨壊死
回転臼蓋の骨の厚さが薄すぎる場合など、せっかく回転した骨が死んでしまい、変形性股関節症が進行する場合があります。股関節痛が強い場合には、可能であれば、大腿骨骨切り術などで対応しますが、不可能な場合、人工股関節置換術となることがあります。
神経麻痺・血管損傷
基本的には、人工関節の場合と同様です。
■入院期間について
当科では、入院期間は、およそ45日(術前2~3日、術後28~42日)です。
■輸血について
骨の手術をすると多少の出血はあります。当科では、全例自己血輸血(術前貯血: 800~1200ml)による手術を行っており、他家血輸血(他人の血の輸血)は、特殊な例を除き1993年以降行わずに手術を行っております。
■入院期間とリハビリについて
まず入院に先立ち自分の血液の貯血や全身の検査のため2~3週間(週一回の来院で)を要します。手術では術中および術後に600cc程度の出血が予想されますので、術前に自分の血液を貯血しておき、必要な場合には術中および術後に貯血した自己血を体にもどします。手術後のリハビリは、手術の翌々日から開始しております。
歩行訓練は、術後2日目から徐々に荷重をかけて行きます。退院の目安は、体重の半分以上の荷重をかけられる状態(松葉杖が安定して使えている状態)としております。
■RAOの長所は?
何と言っても自分の骨・関節を温存できるという点です。的確な適応と正確な手術手技によって手術が行われれば、長期間にわたり関節に痛みをおぼえること無く生活ができるということです。
■RAOの短所は?
自分の骨・関節を温存するために、手術後の入院期間やリハビリ期間が若干長いことです。また、当科では、術後3ヶ月は松葉杖をついていただいております。実際に杖を使用せずに常時日常生活ができるようになるのは、術後4ヶ月頃です。したがって、約半年近く杖の生活をしていただかねばならないという不便さもありますが、関節軟骨の庇護という観点からは、やむを得ないと考えております。
■手術後の生活
股関節のかぶりを手術によって矯正したからといって完全に正常の股関節になったわけではありません。特に日常生活の制限は設けておりませんが、やはり術後も自分の軟骨の摩耗等を避けるため、ジャンプや全力疾走、山登りなど激しい運動や、10kg以上の重いものを常時持ち上げることは、あまりお勧めできません。
長期間良好な生活を続けるためには、水泳やゴルフ、ゆっくりとしたウォーキング程度が良いのではないでしょうか。
■麻酔について
手術を行うためには麻酔が必要です。色々な薬を使用するため薬のアレルギーが生じることが稀にあります。また、術中何か問題が起こっても患者さんは寝ていますから症状を訴えることが当然できません。術中全身管理が必要となりますが、当科では専門の麻酔科医が行っております。術前回診がありますので、分からないことはお聞きになってください。

